勤務間インターバル制度とは:努力義務の内容と導入の進め方(厚生労働省の資料から)
結論:現在は「努力義務」。ただし、義務化に向けた検討が進んでいます
勤務間インターバル制度とは、終業時刻から次の始業時刻までの間に、一定時間以上の休息時間(インターバル時間)を確保する仕組みです。労働者の生活時間や睡眠時間を確保し、健康を維持するための制度として、厚生労働省が導入を促しています。
- 法律上の位置づけ:事業主の努力義務です。 2018年6月に成立した働き方改革関連法に基づき、労働時間等設定改善法が改正され、2019年4月1日から施行されています。導入しないこと自体に、法律上の罰則はありません。
- 義務化の動き: 厚生労働省の研究会は、2025年1月の報告書で、「抜本的な導入促進と、義務化を視野に入れつつ、法規制の強化について検討する必要がある」としました。ただし、本稿の執筆時点(2026年10月)で、義務化を定める法律が成立したという公式の発表は確認できていません。最新の状況は、厚生労働省の発表で確認してください。
- 導入している企業は、まだ少数です。 厚生労働省の調査(令和7年就労条件総合調査)では、導入企業の割合は6.9%でした。
勤務間インターバル制度とは
基本の考え方
たとえば、11時間のインターバル時間を確保する制度では、前日の終業が23時なら、翌日の始業は10時以降になります。所定の始業時刻が8時の会社であれば、8時から10時までの時間は、次のどちらかで扱うのが一般的です。
- 始業時刻を後ろにずらす(繰り下げる):翌日の始業を10時にする
- その時間を「働いたものとみなす」:8時から10時までは勤務したものとして扱い、実際の出社は10時でよい
このほか、「ある時刻以降の残業を禁止し、次の始業時刻より前の勤務を認めない」ことでインターバル時間を確保する方法もあります(厚生労働省のマニュアルより)。
なお、インターバル時間には通勤時間が含まれます。 帰宅から就寝、起床、出社までを含めた時間として設計します。
時間外労働の上限規制との違い
2019年4月以降、時間外労働には上限があります。原則は月45時間・年360時間です。臨時的な特別の事情があり、労使が合意する場合でも、年720時間以内(休日労働を除く)、複数月平均80時間以内(休日労働を含む)、単月100時間未満(休日労働を含む)を超えることはできず、月45時間を超えられるのは年6か月までです。
しかし、この上限は、月や年の「総量」を規制するものです。そのため、特定の日や特定の期間に労働時間が長くなり、十分な休息が取れない状況は、防ぎきれません。勤務間インターバル制度は、この「毎日の休息」を守るための制度です。
|
時間外労働の上限規制 |
勤務間インターバル制度 |
| 守るもの |
月・年の労働時間の総量 |
毎日の休息時間 |
| 根拠法 |
労働基準法 |
労働時間等設定改善法 |
| 位置づけ |
義務(違反には罰則) |
努力義務(罰則なし) |
導入の現状:厚生労働省の調査から
| 項目 |
数値 |
出典 |
| 導入している企業の割合(2023年1月時点) |
6.0% |
令和5年就労条件総合調査 |
| 導入している企業の割合(2025年1月1日時点) |
6.9% |
令和7年就労条件総合調査 |
| 制度を知らなかった企業の割合(2025年1月1日時点) |
15.7% |
令和7年就労条件総合調査 |
政府は、「過労死等の防止のための対策に関する大綱」(2024年8月2日閣議決定)で、2028年までに、労働者30人以上の企業のうち、導入企業の割合を15%以上、制度を知らなかった企業の割合を5%未満にするという数値目標を掲げています。現状は、どちらの目標からも離れています。
導入していない理由として、2023年の調査では、「導入予定はなく、検討もしていない」企業が81.5%あり、そのうち51.9%が「超過勤務の機会が少なく、制度を導入する必要性を感じないため」と答えています。
導入で期待される効果
厚生労働省は、期待される効果を、次の3つにまとめています。
1. 従業員の健康の維持・向上
厚生労働省のマニュアルは、国内外の研究を引いて、次の点を挙げています。
- インターバル時間が短くなるほど、ストレス反応が高まる。インターバル時間が12時間を下回ると、起床時の疲労感が残る(IT系の労働者を対象とした調査)。
- 看護師を対象とした海外の調査では、前の月の夜勤の有無よりも、「11時間未満のインターバル時間があったか」が、翌月の病気休暇の日数に影響していた。この結果から試算すると、11時間未満の休息となる日が月に3回あると、翌月の病気休暇は約21%増えると考えられる。
また、労災の認定でも、休息の短さは見られています。厚生労働省は、2021年9月14日付で脳・心臓疾患の労災認定基準を改正し、業務の過重性を評価する「労働時間以外の負荷要因」に、「勤務間インターバルが短い勤務」を追加しました。
2. 従業員の確保・定着
毎日の休息時間を確保できる職場は、働きやすい職場として、採用や定着につながります。厚生労働省のマニュアルでは、制度を導入した小売業の企業が、「採用時のアピールポイントになる」「既存の社員が相談なく退職するケースが減った」と述べている例が紹介されています。
3. 生産性の向上
制度を導入した企業の効果として、「従業員の健康の維持・増進」「時間外・休日労働の削減」に次いで、「業務の効率化、生産性の向上」「職場の雰囲気の向上」が挙げられています(卸売業・小売業を対象とした厚生労働省の調査)。インターバルを確保するために、仕事の属人化を解消した企業の事例もあります。
インターバル時間は何時間にするか
法令上、インターバル時間の長さは決まっていません。 労使で話し合って決めます。厚生労働省のマニュアルは、次の目安を示しています。
- EU(欧州連合)の労働時間指令: すべての労働者に、24時間ごとに、最低でも連続11時間のインターバルを確保することを求めています。
- 助成金の要件: 働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)では、休息時間数が9時間以上であることが、支給の要件です。
設定にあたっての考え方は、次のとおりです。
- 労働時間だけでなく、通勤時間、睡眠時間、生活時間も考えて決める。
- 「11時間は望ましい水準、9時間は最低限確保してほしい水準」のように、複数の時間数を設けることもできる。まず9時間から始め、運用を見ながら延ばす方法もある。
- 制度の目的から、全社一律にするのが基本。職階・職種・部門などで分ける場合は、理由を明確にして、従業員の理解を得る。
導入の手順
厚生労働省のマニュアルは、導入・運用を、次の4つのフェーズに整理しています。
- 検討する: 労働時間などの現状と課題を把握し、導入の目的を明確にして、経営層が方針を示す。
- 設計する: インターバルの時間数、対象となる従業員、適用除外(例外)、翌日の始業時刻の扱いを決める。
- 導入・運用する: 就業規則や労働協約に規定し、社内に周知する。必要に応じて、顧客や取引先にも説明する。
- 見直す: 効果を検証し、課題を洗い出して、内容や運用を見直す。
就業規則の規定例
厚生労働省のマニュアルに、就業規則の規定例が掲載されています。時間数(○時間)と例外は、自社で決めます。
[例1]インターバル時間と翌日の所定労働時間が重なる部分を、働いたものとみなす場合
(勤務間インターバル)
第○条 いかなる場合も、従業員ごとに1日の勤務終了後、次の勤務の開始までに少なくとも、○時間の継続した休息時間を与える。ただし、災害その他避けることができない場合は、この限りではない。
2 前項の休息時間の満了時刻が、次の勤務の所定始業時刻以降に及ぶ場合、当該始業時刻から満了時刻までの時間は労働したものとみなす。
[例2]インターバル時間と翌日の所定労働時間が重なる場合に、始業時刻を繰り下げる場合
2 前項の休息時間の満了時刻が、次の勤務の所定始業時刻以降に及ぶ場合、翌日の始業時刻は、前項の休息時間の満了時刻まで繰り下げる。
このほか、インターバル時間の確保に関する申請手続きや、労働時間の取扱い(繰り下げた時間を有給にするか、無給にするかなど)も、就業規則などに明記しておくことが推奨されています。
助成金:働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)
制度を導入する中小企業・小規模事業者には、国の助成金があります。以下は、厚生労働省のマニュアルに記載された2026年3月時点の内容です。令和8年度の最新の要件・金額は、必ず厚生労働省のページで確認してください。
| 成果目標(インターバル時間数) |
新規導入の場合の上限額 |
適用範囲の拡大・時間の延長の場合の上限額 |
| 9時間以上11時間未満 |
100万円 |
50万円 |
| 11時間以上 |
120万円 |
60万円 |
- 助成の内容: 取り組みに要した経費に、補助率3/4(常時使用する労働者が30人以下で、一定の取り組みを行い、所要額が30万円を超える場合は4/5)を乗じた額を、上限額の範囲で助成します。賃金を引き上げた場合は、上限額の加算があります。
- 主な要件: 労災保険の適用事業主であること、36協定が締結・届出されていること、年5日の年次有給休暇の取得に向けて就業規則などを整備していること、原則として過去2年間に月45時間を超える時間外労働の実態があること、など。研修、コンサルティング、就業規則の変更、労務管理用ソフトウェアの導入などのうち、1つ以上を実施します。
- 令和8年度の申請: 2026年4月13日から受付が始まり、交付申請の期限は2026年11月30日(月)午後5時です。予算の状況により、期限前に締め切られる場合があります。事業の実施期間は、交付決定日から当該年度の1月31日までです。申請先は、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)です。
運用で気をつけたいこと
- 例外を決めておく。 災害など、避けられない場合の扱い(例外とする旨)を、規定に入れておきます。突発的な対応が多い職場では、例外的な扱いと、その後に休息を取り戻す方法(たとえば翌日以降の休暇や、始業時刻の繰り下げ)を、あらかじめ決めておくと運用しやすくなります。研究会の報告書でも、インターバルを確保できなかった場合の代替措置は、健康観察や面接指導といった事後の措置だけでなく、「代償休暇など、労働からの解放を確保するもの」が望ましいという考え方が示されています。
- 実際の勤務時間を記録して、確認する。 制度を作っても、終業時刻と翌日の始業時刻が記録されていなければ、確保できているかを確認できません。
- 仕事の属人化を減らす。 休息を取った従業員の穴を埋められるよう、業務を共有する体制づくりが、定着のポイントとして挙げられています。
- 残業が少ない会社でも、意味はある。 突発的に残業が発生する場面に備えて制度を設けておくことは、会社が従業員の健康を大切にするという姿勢を示すことにもなります。
WORKSの勤怠でできること・できないこと
WORKSの勤怠は、出勤・退勤・休憩の打刻を記録します。勤務間インターバルの管理には、次のように使えます。
できること
- 出退勤・休憩の打刻を記録し、従業員ごと・日ごとの始業時刻と終業時刻を、一覧で確認できます。
- 勤怠データを、CSVやPDFで出力できます。誤った打刻は、修正の申請と承認の流れで直せます。
- 36協定の上限(月45時間・年360時間と、特別条項の上限)に対する、時間外労働の警告を確認できます。インターバルの確保と合わせて、長時間労働の抑制に使えます。
できないこと(現時点)
- 勤務間インターバルを自動で判定し、不足を警告する機能は、現時点ではありません。
- インターバル時間は、「翌日の始業時刻 − 前日の終業時刻」で求めます。WORKSでは、勤怠のCSVで、日ごとの終業時刻と翌日の始業時刻を確認する運用になります。
制度の設計(時間数・対象者・例外)や、就業規則の整備は、社会保険労務士など専門家に相談しながら進めてください。
導入前に確認したいチェックリスト
- 現在の終業時刻と翌日の始業時刻の実態(最短のインターバルが何時間か)を把握しているか
- 導入の目的(健康確保・定着・採用など)を、労使で共有しているか
- インターバル時間数を決めたか(通勤時間を含めて、休息が確保できるか)
- 対象とする従業員の範囲と、適用除外(災害など)を決めたか
- 翌日の始業時刻の扱い(繰り下げ/働いたものとみなす)と、賃金の扱いを決めたか
- 就業規則または労働協約に規定し、従業員に周知したか
- 終業・始業の時刻を、正確に記録する仕組みがあるか
- 助成金の対象になるか、申請期限と要件を確認したか
出典
※本記事は、2026年10月時点で確認した公開情報の整理であり、法的な助言ではありません。制度の導入や助成金の申請にあたっては、最新の公式情報を確認し、必要に応じて社会保険労務士などの専門家にご相談ください。
よくある質問
勤務間インターバル制度を導入しないと、罰則はありますか?
現在は、労働時間等設定改善法第2条にもとづく事業主の努力義務で、導入しなくても法律上の罰則はありません。ただし、厚生労働省の研究会は2025年1月の報告書で、義務化を視野に入れた法規制の強化を検討する必要があるとしています。
インターバル時間は何時間にすればよいですか?
法令上、時間数は決まっておらず、労使で話し合って決めます。目安として、EUの労働時間指令は24時間ごとに連続11時間以上、働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)は9時間以上を要件としています。「11時間は望ましい水準、9時間は最低限」のように複数設定することも、まず9時間から始めて延ばすこともできます。
通勤時間は、インターバル時間に含まれますか?
含まれます。厚生労働省のマニュアルでは、インターバル時間には生活時間、睡眠時間、通勤時間などが含まれるとされています。時間数を決めるときは、従業員の通勤時間も考えて、休息が確保できるかを確かめます。
残業が少ない会社でも、導入する意味はありますか?
あります。厚生労働省のマニュアルは、突発的に残業が発生する場面に備えて制度を設けておくことが、従業員の健康を大切にする経営姿勢を示し、安心感につながるとしています。
勤務間インターバルの義務化は、いつからですか?
2026年10月時点で、義務化を定める法律が成立したという公式の発表は確認できていません。研究会の報告書は、11時間の確保を原則とする考え方なども示していますが、時期や内容は決まっていません。最新の状況は、厚生労働省の発表で確認してください。
WORKSで、勤務間インターバルを自動でチェックできますか?
現時点では、勤務間インターバルを自動で判定して警告する機能はありません。WORKSの勤怠で、日ごとの始業時刻と終業時刻を確認し、CSVで出力して、「翌日の始業時刻 − 前日の終業時刻」を確認する運用になります。36協定の上限に対する時間外労働の警告は、確認できます。
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